
配管工事において、溶接は安全性と耐久性を左右する重要な工程です。どの溶接技術を選ぶかによって、施工品質やコスト、工期まで変わってきます。本記事では、配管敷設でよく使われる代表的な溶接方法を解説し、現場に応じた選び方のポイントを紹介します。
■ 主な溶接技術の種類
1. アーク溶接(被覆アーク溶接)
最も一般的に使用される溶接方法です。電極棒の先端に電流を流し、発生するアーク熱で母材と溶加材を溶融して接合します。設備がシンプルで現場対応力が高く、屋外や狭所でも活用できます。ただし、溶接者の技量によって仕上がりが大きく変わるため、熟練工の技術が必要です。
2. TIG溶接(アルゴン溶接)
不活性ガス(アルゴン)で母材をシールドしながらタングステン電極を使用する溶接方法です。ステンレス配管や薄肉管の施工に多用されます。仕上がりが美しく、気密性・耐食性が求められる場面に最適です。一方で、溶接速度は遅く、長時間の施工では効率が課題になります。
3. MIG/MAG溶接(半自動溶接)
ワイヤを自動供給しながらガスでシールドして溶接を行います。施工スピードが速く、一定品質を維持しやすいのが特徴です。工場での量産配管や現場での効率施工に向いています。ただし、風の影響を受けやすいため、屋外施工ではガスシールドが乱れやすい点に注意が必要です。
4. サブマージアーク溶接(SAW)
粉状フラックスでアークを覆いながら行う溶接です。高電流で深い溶け込みを得られるため、大径管や厚肉管の長尺溶接に用いられます。設備が大型化しやすいため、現場というよりは工場内の配管製作に適しています。
■ 選び方のポイント
1. 配管材質に合わせる
– 鉄管・炭素鋼管:アーク溶接、MAG溶接が一般的
– ステンレス管:TIG溶接での高品質仕上げが推奨
– 銅管や特殊合金管:TIG溶接やろう付けが選ばれる場合も
2. 配管径・肉厚で使い分ける
– 薄肉・小径管:熱影響を抑えやすいTIG溶接
– 厚肉・大径管:アーク溶接やサブマージアーク溶接
3. 現場環境に適応させる
– 屋外や狭い場所:アーク溶接が有利
– 風の強い環境:TIGや被覆アークが安定
– 工場や作業場:半自動溶接で効率化可能
4. 品質要求レベル
– 高気密性・耐食性重視:TIG溶接
– コスト重視・スピード重視:MAG溶接やアーク溶接
■ まとめ
配管敷設における溶接技術は、用途や環境によって最適解が異なります。鉄管であればアーク溶接、ステンレスならTIG溶接、効率重視なら半自動溶接といったように、条件に合わせて技術を選ぶことが重要です。また、どの方法を選んでも「施工者の技量」が品質に直結する点は共通しています。現場の状況を見極め、正しい溶接方法を選択することで、安全かつ高品質な配管敷設が実現できます。